遠慮していると思われた話

ほしいの

90年代大ブームだったタレントショップ

私が中学生だった90年代に、タレントショップなるものが大ブームになり、
憧れの地東京の原宿竹下通りには、数多くのタレントショップが軒を連ねたそうな。

タレントショップ

そんなタレントショップが、当時おばあちゃんが入院していた函館の病院の近くにできた。
当時東京は今よりも遥か遠い彼方の憧れのメトロポリス。
小さい店でも「『東京』が来た!」という感じで眩しく見えた。

タレント

どういう大人の事情なのか、中学生の私にはその理由を知る術もなかったが、
ラインナップは森口博子、美川憲一、コロッケの3名の店だった。
わたしは特にこの3名のファンではなかったが、確かに当時大人気のタレント達であった。

ジーパン

商品はハンカチやペンなどの日常アイテムから、
正直ダサいとしか言えない洋服なども売っていた。

しかも、ダサい上に結構な値段が設定されていた。

コロッケのジーパンなんてだれが買うんだろ?

ケミカルウォッシュで裾がレースアップされた、
ただでさえダサいデザインのジーパンに
コロッケのキャラクターがプリントされていた。

どうやら誤解を招いた

ほしいの
ほしいの?

誰がどう見ても欲しくないジーパンを広げて見ていたら

ゆったん1

親戚のお姉ちゃん「湯湯」に欲しいのかと尋ねられた

ゆったん2
いらないよ。9800円だって。(笑)

正直な気持ちを話した。
ていうか、そんな質問しなくても、いらない事くらいわかるだろう。
逆に聞くけど、欲しいか?

湯湯は森口博子のハンカチを買い、私はコロッケのジーパンを棚に戻して店を出た

おばあちゃんが入院中の病院へ

病院

少し付近を散歩して、湯湯より遅れて病室にもどると

かあさん

なんか深刻そうな雰囲気

いい予感はしない。なんか告げ口でもされて怒られる前みたいな感じ

かあさん2
あんたジーパン欲しいんだって?これで買っておいで

おばあちゃんが1万円渡してきた

いらない
いや、いらないよ。

嘘偽りない気持ちであった。

遠慮
いいから!これで買ってきなさい!

遠慮していると思われた

怒られる

なかば強制的にタレントショップに再度向かった。

いや、本当にいらない…
いいから、買いなさいって言ってるでしょ?

「私はコロッケのジーパンは欲しくありません。」

この上なく常識的なセリフを口にしたのだが、
なぜか半ギレされた。

おい、なぜそんなにこの世で最もダサいジーパン(9,800円)をそんなに私に買わせたいのだ!?

たしかに私は、同級生にファンがいない「すかんち」の大ファンである。
それは認めよう!

つまり世間では人気者のコロッケのジーパンが欲しくない私は、やはり変わり者ってことでしょうか?

「お友達と同じものが好きになれない」

普段感じている劣等感。
やっぱり私は世間からズレているのでしょうか??

いや誰か湯湯が間違っていると言ってくれ!

しぶしぶ
ほら、買いなさい!

このクソダサコロッケジーパン、欲しいのは湯湯なんではないだろか。
もし私の甥っ子がコロッケのジーパンを欲しがってたら、全力で止めるぞ。

最後の抵抗も虚しく、私はコロッケのジーパンをレジに持って行き、
自宅に帰ってクローゼットにしまい込み、履いてみることはなかった。

ダサいジーパン

その数ヶ月後、おばあちゃんは天国へ旅立った。
これまでたくさんの可愛くセンスの良い子供服を、
洋服ダンスから溢れるほど買ってくれたおばあちゃんが
最後に私に買ってくれた洋服は

コロッケのジーパン

おばあちゃんが亡くなった後、罪悪感から一回だけ履いた
今はどこにあるのやら

日本であのジーパンを買った人はおそらく3人くらいだろう。

コロッケのころっ家

そんなコロッケさん、今度はコロッケ店を出店したようです。
そもそも20年前もジーパンではなくコロッケを売るべきだったのでは…